ドイツ基礎学校においては、教科横断的・総合的学習である「事象教授」(Sachunterricht)が設置されている。地球環境問題が世界各国共通の課題となり、その解決へ向けてさまざまな取り組みがなされている中、ドイツでは1980年以降、環境教育は教科を越えた授業原理として公認され、初等段階においてはこの「事象教授」が環境教育のための中核的な教科とみなされている。 16州から成り立つ連邦国家ドイツでは、原則的には各州が独自に教育政策を進めているが、連邦レベルの勧告や決議等により、教育改革の全体的なガイドラインの把握が可能である。これから21世紀に向けて行われる基礎学校の学習指導要領改訂の原則を示した、各州の調整機関である常設各州文部大臣会議の決議「基礎学校の活動に関する勧告」(1994年版)において、環境教育や異文化間理解教育等、学際的教育課題への取り組みも求められている。 事象教授においては、例えば、学校園、ビオトープ、学校外の施設・機関の利用などにより、地域に根ざした環境テーマを取り扱うことで、そこでの授業は体験的、作業的になり、子どもの調査・探究の能力が育成される。その際に、地域の問題が地球規模の問題とどのようにかかわるのかを考え、意識化することが重要になってくる。今後の研究の展開として、州レベルの取り組みについて、さらに具体的に明らかにしていく計画である。学習形態としては、発見学習や行動的理解、プロジェクト学習やテーマ学習、自由活動や一日・週間計画活動などが挙げられる。学校教育の伝統的枠組みが開放され、授業形態が弾力化されている。基礎学校の子どもたちのための具体的な生活現実の解明や行動的方向づけを一般的に優先させた環境教育は、子どもが具体的に経験できる生活世界がその出発点となっている。環境保護教育、学校園活動、自然体験が事象教授における環境教育の実践を代表している。
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