ドイツ基礎学校においては、教科横断的・総合的学習である「事象教授」(Sachunterricht)が設置され、環境教育のための中核的な教科とみなされている。ドイツでは1980年の文部大臣会議の決議により、環境教育は教科を越えた授業原理として公認された。この決議により、環境教育において児童・生徒が行動することの重要性を明確に示し、加えて教員の現職教育において環境教育を導入する必要性も指摘されたことは注目に値する。 その後、学習指導要領や教員養成への環境教育的な観点の導入、学外の専門家の協力など、環境教育のための人的、物的な整備が進んでいることが報告されている。しかし、学校での実践状況は、必ずしも十分ではなかった。環境教育に関する調査から、当初は自然科学諸教科中心の環境教育が行われていたことがわかる。その後、さまざまな教科での取り組みへと変化し、内容やテーマも多様化され、教科横断的な取り扱い、プロジェクト活動の実践などの充実により、質的な改善がみられる。基礎学校においても同様で、事象教授を中心にさまざまな教科の中で環境教育が実施されていることがわかる。 一方、環境と積極的な触れ合いが重視されながら、学校園やビオトープなどが十分に活用されていない状況もみられる。教師自身が環境を十分に理解し触れ合う必要性があり、今後ますます体験に根ざした教員養成や現職教育の充実が望まれている。その際に、生態学的に基礎づけられた教員養成と現職教育の実践が必要とされる。 ドイツにおいては、基礎学校の段階から、環境を知覚・経験し、主体的に問題解決しながら責任を持って行動することが、児童・生徒に求められ実践されている。環境教育の具体的成果を取り入れ、生態学的に基礎づけられた教員の養成と再教育を行うことは今後ますます重要になってくる。
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