創造性は、生来の素質と見なされることが多かった。本研究では、創造性を育成可能な素養とみなし、そのための教育に使われる教材に要請される構造と期待される効果を明らかにすることを目指して進めてきた。 本研究で磯本らは、自ら問題を発見し、学び、解答を見つける意欲と向上心を創造的素養と考えている。そのためには、創造性に容易に結びつく学習環境と学習教材を準備する必要があり、ここでは主として学習教材に焦点を合わせて研究を進めてきた。幸いに近年のマルチメディア技術によって、この方向での学習教材の作成が容易になった。 初年度である平成10年度は、創造性に結びつく学習教材の内容と構造を中心に研究した。題材は、万有引力のもとでの物体の運動である。初等水準は、平面上の的当てゲームや球面上の的当てゲームなどである。中級水準は、宇宙船のドッキングゲームや人工衛星打ち上げゲームである。上級水準は、月旅行ゲームと火星旅行ゲームである。これらのゲームを通じて、試行錯誤しながら万有引力と物体運動の関係を体得させる。 これに要する知識は、ニュートン力学、連立常微分方程式、プログラミング技法、地学・天文学などである。本研究の目的は、こうした知識を直接に教示するのではなく、学習者が自分でゲームを理解し、物体や宇宙船を正しく操作するために必要な知識を学ぶ意欲を持たせ、学ぶべき事柄を自分で考え探求する方向へ導く方策を明らかにすることである。 平成10年度には、こうした事柄を学習教材として編成するための素材となるソフトウェア群を整備し、平成11年度における創造性育成のための教授方略の解明に向けて準備を慣用した。
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