心不全における薬剤治療の目的は、心拍出量や体・肺循環の動・静脈圧などの血行動態変数を、病的な状態から許容される正常な状態に回復させることにある。各種の心不全治療薬の効果は心・循環系の力学的なパラメータの変化として記述できるが、循環動態変数に対する直接の変化として考察することは極めて困難である。 これは、心・循環パラメータと循環動態変数が生理学的機構を介して複雑に関連しているためで、そのため心不全状態の生理学的な理解と診断・治療に際しては、心・循環系全体を記述できるモデルに基づく考察は極めて有用である。 本研究の目的は、心不全状態の生理学的な理解と診断・治療の教育のために、心・循環系の力学モデルを中に持つ、インタラクティブな電子教科書を作成し(シミュレーション部分はCGIプログラムを作成する)、インターネットを介して公開することにある。 今年度は以下の作業を行った: 1. 心・循環モデルの再検証と循環パラメータの同定 2. モデルの数学的な定式化 3. モデルの数値解法の検討 4. シミュレーションの計算部分のコーディング(Standard Pascalを使用) 次年度は教科書のテキスト部分を作成するとともに、シミュレータを組み込み、電子教科書として完成させる予定である。
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