高齢難聴者の日常生活における聞こえの補償方法を検討し、次の研究成果が得られた。 1. 中・高年齢の難聴者を対象とした「聞こえにくさの自己評価チェックリスト」及び「テレビ聞こえの不満度チェックリスト」を作成した。 2. 上記のチェックリストを用いた調査を実施し、年齢と日常生活における聞こえの不満度との関係を考察する資料を収集した。 3. 高齢難聴者のために開発された補聴用狭指向性スピーカシステムの効果を実際の住居環境の中で評価し、特に音声の受聴明瞭度の改善が得られることを確認した。 4. 高齢難聴者のもつテレビの音声聴取の不便さを軽減するためにとられている多様な手段について整理し、それらにみられる共通の不満の一つに、音質の悪さが伴うことが挙げられることが判明した。 5. 補聴用狭指向性スピーカシステムの音声受聴明瞭度を損なわずに同時に音質の改善を実現するためには、高齢難聴者の聴力が高域の周波数で減退するのに対して、その周波数範囲のみを増幅補償するのではなく、低・中音域の増幅を適度に加えるとよいことが明らかになった。 6. 聾学校などの聴覚障害教育機関における聴覚補償の実践と課題解決方法に、高齢難聴者の支援プログラムの作成に有用な内容が多いことが確認された。
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