本研究の目的としては、幼児教育者・保育者および幼児教育を専攻する学生のコンピュータリテラシーの育成、および幼児のコンピュータリテラシー育成の両側面からその方策を探ることにある。 (1)幼児教育者・保育者に対する情報リテラシーの向上 情報リテラシーの向上を図るための講習会等を利用して、幼児教育者・保育者への意識調査を実施した。情報機器に対するリテラシー向上の必要性については認識が高まりつつある。特に中堅以上の関係者の意識に変化が見られ、意欲が窺えた。 一方、現実では、幼児に対する幼稚園等での指導のみならず、家庭での情報メディア等との接触割合も無視できないものがある。したがって、保護者に対して、家庭での指導のために効果的な情報提供や伝達技能といった能力が必要なことも明らかになった。 (2)幼児教育・保育を専攻する学生に対する情報教育 学生は授業を通してコンピュータの有用性は掴むが、コンピュータヘの不安や回避に関する変化はほとんど見られない。その理由には、1コマという極めて少ない授業時数の影響もあるから、学習の成果を発揮できる環境を整える体制も必要と考えられる。また、情報教育内容として、操作能力の習得のみに固執することをせずに、幼児教育現場に即した機器や教材を操作する機会を設けたことによって、学生の専攻分野における「コンピュータの位置づけ」について認識を深めることができた。 (3)幼児のコンピュータ等利用に関する調査と実践 福井県内の小浜幼稚園において、家庭におけるテレビやパソコンなどのメディアとの接し方に関するアンケート調査を実施して、園児の使用実態、保護者の関心度などを調べた。また、同幼稚園にパソコンを設置して、幼児のコンピュータ利用に対する取り組みを実践した結果、導入から半年後には年長組の園児はパソコンを使って全員が思い思いの絵を描けるようになり、遊具の一つという位置づけが確立できた。
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