1. 目的 肢体不自由のある子どもでは、運動機能の制約から、指で数えたり、物を数えながら操作することが困難である場合が多く、数量の概念を獲得する際に、大きな困難を示すことが多い。本研究では、マルチメディア教材を利用することにより、肢体不自由のある子どもたちが示すこれらの困難を軽減できるかどうかを検討することを目的とした。 2. 方法 まず、上肢の運動障害によってキーボードやマウスが操作できない子どもが学習できるように、1〜5個のスイッチで操作できるコンピュータシステムを構成した。そして、市販の算数教育用マルチメディア教材を、このシステムを利用して、肢体不自由のある子どもの学習にとっての有用性という観点から評価した。これらの評価結果に基づき、肢体不自由のある子どものためのマルチメディア教材を作成する際の配慮点について検討した。 3. 結果及び考察 算数教育用マルチメディア教材について検討した結果、肢体不自由のある子どもの学習における有用性という観点からは、画像等による説明が不十分であると評価されたものが多かった。例えば、ある数とある数を合わせるといくつになるかという課題では、それらの数量を示す絵が提示され、子どもは画面を見て数えることを求められるが、肢体不自由のある子どもの場合には、数える数量が多くなると目で見て数える際に混乱を示すことが多かった。そのため、肢体不自由のある子どもが利用する場合には、スイッチ操作等により主体的に『数える』ことができるように、操作手順についての配慮が重要であることが示唆された。
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