研究概要 |
今回の研究成果を以下の3点に述べる。 1.研究計画(1)に関連して、文の読み能力と関連する記憶能力を測定できるためのリーディングスパンテスト(RST)を実施した。これまで取り組んできた難聴児の作業記憶の測定テストでは、読み上げた文を聞きながら記憶するという、聞き取り能力に関するものであった。この方法により、国語の読み書き能力との関連性を検討することが可能となろう。 2.普通児(小学校2年,4年,6年各一クラス合計99名に実施)に対する調査の結果、全体的に学年が進行するにつれてどの記憶能力も発達するが、とくに4年生にかけてその傾向がはっきりしている。RSTでは、特にその傾向が健著である。また、市販の国語の到達度テストを実施して、構文の読解力との関連性を調べたがあまり相関は見られなかった。この種の作業記憶能力を検出できる国語能力テストを作成する必要があろう。 3.難聴児(小学1年から中学3年までの計43名)に対する調査の結果、機械的な短期記憶能力(数字やひらがなのdigit memory span test)は健聴児に比較してかなり劣るものの、作業記憶RSTに関しては差が見られなかった。今回のテストで用いられた短文のレベルではなく長文のストーリー性のある文章を材料に読解力との関連を見ていく必要があろう。
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