自己学習能力が生涯学習の時代において望ましい能力であり、その形成が重要であることは言うまでもない。しかし、自己学習能力の構成要素やその形成過程がいかなるものであるかについては明らかになっていないのが現状である。 本研究では、自己学習能力を認知心理学的な知識論の観点から理論的に考察し、問題解決学習などの学習スタイルは自己学習能力形成に直結しないこと、むしろ知識の自己増殖的な発展過程が重要であるとの緒論を得た。 また、オープンエンドな指導法とよばれるものには大別して2種あること、すなわち指導や思考の多様性と捉えられているものと、認識の進展に関するものがあることを見いだした。自己学習能力に関係するのは後者である。 これらの結論をもとに、学習における知識の自己増殖過程がどのようなものであるかを理論的・実験的に考察し、有力な作業仮説として次のような考えを得た。すなわち、自己増殖的な活動のおこりやすい知識構造は、広範な適用範囲を持つべースとなる知識と、それぞれの事象に特有な条件に関する知識の両者で、各事象を捉え理解すべきであるということである。知識構造がこのような状態であれば、新たな事態に遭遇した際に柔軟な適用が可能になるのである。この作業仮説をもとに、学習指導過程の設計を実践的に検討して、妥当であるとの見通しを得た。
|