1.主体性の形成を意図する数学科の学習・教授過程の設定 主体性概念には、個人的側面が強く現れる自主性の因子、社会的側面が強く機能する協力性の因子、そして、これらの因子に数学的な考え方が加わって、相互に関連しあう問題解決性の因子が反映している。数学教育学的視点から、次の二つの学習・教授過程が設定できた。 一つは、道徳の学習過程に類似するもので、目標をopenにして、自由な思考と対話を中心とする社会的側面を強調する学習形態であり、他の一つは、目標をclosedにして、数学的な考え方を前面に置き、個人的な側面を強調する学習形態である。 2.自主性、協力性、問題解決性、学級雰囲気、学習課題を評価する測定尺度の構成 感情・情緒的成分が伴う自主性、協力性等の因子を数量化することには困難さが生ずる。そこで、本研究では、情緒的な意味をもつ言語を対とするSD(semantic differential)法を採用して、その困難点を克服した。 構成した尺度は、「ふんわりーかたい」といった雰囲気を測定する尺度(3種類)、「こいーうすい」といった課題内容の深さを測定する尺度(3種類)、「はきはきーもたもた」といった自主性を測定する尺度(5種類)、「鋭いーにぶい」といった問題解決性を測定する尺度(5種類)、「わくわくーしらけ」といった協力性を測定する尺度(5種類)である。 本研究の成果は、これまで安易に、理想的に語られてきた主体性概念の研究に、一つの方向を提供するものと考える。
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