研究概要 |
主体性なる用語は,1945年代から学校教育とは何か,どのようにして数学を教えるか,といった様々な見解を包含しながら,学校教育の場において中心的な役割を担ってきた。しかしながら,主体性概念の本性は,いまだに明らかになっておらず,かなりの多義性・あいまいさを有している。 本研究の目的は,数学教育的相から,(1)幾つかの情意的変数を内包する主体性概念の規定を図ること,(2)数字の学習・教授過程において生じる主体性概念の枠組みを構成すること,そして,(3)主体性概念を評価するための測定用具を開発すること,である。 研究の結果 主体性なる概念は,1945年代から1955年代にかけて,哲学,文学,歴史研究の分野で活発に論議されている。本研究では先行研究に見られる思想を考察して,主体性概念の規定を図った。主体性は数学的活動場面において,積極的に数学的真理や価値を探求する態度,実践力といえる。しかも,この概念には,自主性,協力性,共感,問題解決力,思考の深化といった変数が関連してくる。 主体性概念の枠組みに即して,二つの学習・教授モデルを構成した。その一つは,自由な発想と討論を中心とするもので,社会的側面を強調する学習形態である。他のモデルは,数学的な考え方を前面において,個人的側面を強調する学習形態である。 また,数学学習過程における生徒の主体性を測定するために,21個の2極対からなるsemantic differential尺度を作成した。この尺度の構成は,自主性,協力性,間題解決力を測定する尺度(各5種類),および,学級の雰囲気,思考の深化を測定する尺度(各3種類)からなる。 本研究で得られた成果は,これまで,学校教育の場で理想的に語られてきた主体性概念の研究に一つの方向を提供するものと考える。
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