本研究の目的は、現在の総合的な学習と人権教育の思潮を踏まえ、「現代の社会問題」を中核に据えた総合的学習のカリキュラムの編成と学習方法を構想することである。今年度の研究実績は、以下のとおりである。 1. わが国の総合的学習の先導・先進校の授業プラン・実践報告・授業事例を収集し、また、研究授業を参観し、以下の視点から分析を試みた。 (1)時間の名称 (2)目標・ねらい・必要性 (3)教科・領域との関係-カリキュラム構造 (4)各学年の内容・単元と授業時数-系統性 (5)授業方法・学習組織の特色 (6)評価-学習の成果と課題 (7)子ども・学校・地域の実態を踏まえた特色ある単元 なお、総合的学習を類型化するための枠組みについては、来年度の課題である。 2. 90年代のドイツ基礎学校の総合的な学習に関するカリキュラムの収集・分析を試みた。その結果、(1)従来の教科を存続させながら、現代の「中核問題」 (価値、生活基盤、構造変化、平等、参加)に、各教科の「主要テーマ」と「学習領域」を関連づけ、基礎学校教育全体を「総合学習化」させている事例(シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州)。(2)教科外に、健康・性・メディア・平和・人権・環境教育などを含む「総合的学習」を設けている事例(ヘッセン州)。(3)各学年に「総合的なテーマ」を設けている事例(バーデン・ヴュルテンベルク州)など多様であった。 3. 小・中学校教諭に研究協力者として委嘱し、研究協議会を開催中であり、来年度、総合的学習の授業モデル構築のための基本構想を検討する。
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