本年度の研究は、二つの課題を持って実施した。一つは、韓国解放後の歴史教育を巡る動向と葛藤を日本の場合と比較研究しながら進めた。二つは、1970年代の社会科と歴史教育の動向を、同じく日本の地域改善のための教育実践と関連させながら韓国のセマウル運動と教育課題を分析した。 前者の研究課題の一部は、論文にまとめ発表をした。後者のセマウル運動を中心とした1970年代の分析は、まだ資料収集の段階で、今後論文としてまとめていく予定である。 戦後韓国の歴史教育の分析においては、日本の戦前郷土教育運動との関連や地方資料との比較を通じて進めた。つまり韓国解放後に誕生した新民族主義歴史教育は、日本の間接的な影響を受けた歴史学者や民族主義者によって誕生させられてきたという事実を確認できた。そして日本の影響を受けながらも、米ソの対立という状況の中で、歴史教育はその対立を克服し、朝鮮南北統一論を提起したのである。その南北統一論は、1950年からの朝鮮戦争の中で挫折していくのであるが、しかし、その後の韓国民族統一論との関係で1970年代に再び注目されてくる。その流れを追っていく予定である。
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