「補聴器によって増幅された音声の定量化」に関する研究では、実際の音声と補聴器を用いて、増幅された音声の定量化を行い、難聴者の音声の聴取可能性を研究した。ここでは、市販されているリニアとノンリニアの二種類の補聴器を用いて、補聴器の設定の違いによる増幅された音声のダイナミックレンジとレベル分布の測定を行った。 「聴覚障害者の補聴器の自己評価」に関する研究では、日常生活における聴取環境や対象を表わす質問項目を作成し、補聴器を常用している聴覚障害者を対象に、補聴器に対する満足度と、補聴器装用下の聞こえの自己評価を行った。満足度と聴取環境や対象の違いによって、補聴効果に有意差が見られた。その原因について、装用効果や補聴器に対する個人の認識の違い、聴力との関係等から考察した。 「聴覚障害児の補聴器の自己評価」に関する研究では、小学校通級指導教室に通級する児童を対象とした。質問紙は補聴器の装用状態に関する質問と、補聴器の聞こえに関する質問で構成されていた。難聴児は補聴器の聞こえに対して高い満足度を示していた。しかし個々の場面における補聴器の聞こえは異なっていることが明らかとなった。特に雑音の中での聴取の困難性が高いことが示唆された。 「人工内耳と補聴器の選択」に関する研究では、聴覚障害児に対して、両親はどうして人工内耳手術を決意するに至るかという心理過程を明らかにすることを目的とした。対象は、聾学校幼稚部に在籍している聴覚障害児の父兄であった。補聴器の聞こえ、発声発語、それに家族内での音声言語によるコミュニケーションに関する質問項目を作成して回答を分析した。その結果、親は補聴器の聞こえよりも、むしろコミュニケーションの状況を判断の基準としているのではないかと思われた。
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