平成10年度においては、(1)教育実習生に対する児童認知調査の実施とフィードバック、(2)現職教員に対する児童認知調査の縦断実施とフィードバック、を実施した。これにおいて、フィードバック資料とする解析方法を整備した。目的と解析方法の対応としては、単一実施ごとのフィードバック目的では因子分析法を導入した結果資料の整備、同一学級集団の繰返し実施から教師認知変動を吟味する目的では正準相関分析法を導入した方法を整備した。 (1)について実習生の児童把握の視点枠組の分類規準を提案した。初等教育実習を経た50人の実習生による教師用RCRT調査データより、教育実習で活性化される児童把握のモノサシ数はせいぜい2〜3個であることが明らかとなった。また、これらモノサシ内容の分類基準として、 I. 児童の活動等を教師との直接の関係より看取る視点 II. 児童の授業への適応および認知的能力を主として授業場面から看取る視点 III. 生活面および性格面の諸特性の観察記述につながる視点 の3点でとらえられると考えられた。この基準での実習経験の把握は、事後指導の場面などで各実習生の実習経験を再吟味する上で有用な基準であり、教育面での有用性も示唆された。 (2)につて現職教員(小学校)に教師用RCRT調査を学期ごとに縦断実施し、年単位での教師の児童認知変動について考察した。のべ10人の現職教員のRCRT縦断調査データより、各学期で教師の活性化するモノサシ数は2〜3個であると明らかになった。また、モノサシの機能が特に2学期末で多様化すること、多様化に伴い児童一人一人の把握の分化の高まること、等の教員認知の年間変動の一般的傾向を見出した。加えて、教師から見た児童の適合性評価(ウマの合う/合わない)と認知変動の関連について吟味し、教師の苦戦する「ウマの合わない子」の教師の力量形成における意味を議論した。
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