研究概要 |
期間中の研究成果を、「児童認知調査の方法の整備」と「教育実習生への適用と教育実践」の2章で報告書としてまとめた。 児童認知調査の方法の整備(I章)で、まず調査票開発の背景を示した。理論的背景としてKelly,G.のパーソナルコンストラクト理論を基礎にすること、これを学校現場の教師の実践活動に応用したことを示した(1節)。次いで、調査の方法(2節)・分析(3・4節)・フィードバックの方法(5節)の検討成果を示した。分析では継時的変動情報の扱いに注目し、繰返し調査に正準相関分析を当てはめることの有効性と統計的問題に言及した(4節)。フィードバックの方法として、分析結果の解釈と対応させて臨床的視点を加味した面接手順を示し、研究期間中に蓄積したデータから現職教員の場合の実際例を示した。また、対面でのフィードバックのできない場合として書面の方法を示し、現職教員の場合の実際例を示した。 ネットワーク上への調査システムの構築は期間中に完了しなかったため、報告書に含めなかった。 教育実習生への適応と教育実践(II章)で、教育実習生の抱える子どもとの関係作りでの心理的諸問題を概観し、実習生教育における児童認知調査の導入の目的を示し(1節)、実習生の子どもに向ける認知枠組み情報の集積を示してその内容分類を試みた(2節)。結果として、3タイプの内容分類が見込まれ、特に子どもとの心理的距離の大小がこの分類に反映されると指摘した。適切な事後指導のもとで子どもとの適度な心理的距離での関係作りが可能となる示唆を得た。最後に、実習生(教師)の児童認知スタイルの個人差を示す指標として、教師内地位指数による認知パターンを整理した(3節)。認知パターンの個人内変動の分析と事例研究よりこの見極めが教師の力量形成の指標として有用と認め、教師教育における活用の方向を論じた。
|