チョムスキーの生成文法に基づいて出てきた普遍文法UGの中で、とりわけ英語教育に資すると思われる部分を探求してどのように応用できるかを考えてきた。その中でもθ理論の意味役割が日英語の文型文法に多くの共通性がみられるので、θ理論を現場に適用しやすいような形で示した。動詞の意味に基づいて句を意味単位に還元して理解しやすいようにした。動詞は文型を作るに当たって「誰が」「いつ」「どこで」「誰に対して」「何を」「どのように」したというような意味単位をとり、動詞の意味に対してどれだけ親密度が深いかによって語順が成り立っていることを明確化した。語順の原理は日本語能力に基づいて判断できるものであるというのが私のたてた作業仮説である。従って現場への応用実験として、こちらの予測通りに中学、高校レベルの学生が振る舞うかどうかの実験を積み重ねた。これにはいろいろな種類の動詞に基づいて多くの実験を重ねる必要があることがわかった。まず、時、場所を表す意味単位は日本語の場合は自動的に話題化されて主語の前に来ることが多い。行為動詞の場合には時、場所が判断を迷わすのでそれをのぞいて他の意味単位での実験をしたが、時と場所の問題についてもさらに探求が必要であるし、実験をし残した動詞も多い。しかし、総じて、日本人が外国語を学習する際に母語である日本語能力を媒介にして外国語の文構造が生成できるならば、学習の負担が軽減されるという利点を持っていることがわかった。最終年であるので日本語の言語能力がある種の普遍文法として英語教育に役立つことをまとめた報告書を作成したい。
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