本年度計画とそれに対する研究実績は以下の通りである。 1.前年度の考察から明らかになった課題をもとに、カリキュラム・指導・評価のシステムの枠組みを構築する。 => 前年度の考察で、数学的道具の使用の異なる側面として、「基礎技能」「表現」「処理」「解釈」「問題解決」「道具づくり」を区別した。本年度は、これらの側面を意識したユニット構成上のアイデアとして、「道具を選んでの計算」「数学的探究や説明の中での道具使用」「日常生活の問題解決における道具使用」「総合的な作業における道具使用」の4つを考案し、その中の2つ「選択」「日常生活」について実際に児童に道具として電卓を用いて活動してもらい、その様子を観察した。その結果、児童の道具使用が問題画面によってかなり異なること、道具を何となく使っており意味や有効性についてあまり考えていないことが分かってきた。 2.ビクトリア州の数学教育研究者を招き、構築した枠組みや学習ユニットについてのレビューを受ける。 => 1999年9月にKaye Stacey教授(Melbourne大学)を招き、数学的道具の使用や、ユニット構成のアイデアや調査結果についてレビューを受けた。その結果、特に、電卓の授業において、電卓使用の側面を分類することの必要性が浮き彫りになった。また、Stacey教授らのチームでは、小学校低学年が対象であるのに対して、我々は小学校中高学年を対象にしており、両者の研究が統合される可能性が見えてきた。
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