研究概要 |
本研究では,1998年の横断的調査による器用・不器用の意識の推移と縦断的調査を比較検討した。縦断的調査は,1998年より2000年までの3ケ年間,小学4年生から中学3年生の全学年を対象に実施した。その結果,器用・不器用意識の横断的調査の推移と3ケ年間の縦断的調査の推移は近似であること,器用・不器用を抱く子どもに拘わらず,児童生徒のものづくりへの意欲は高いが,経験は少なく,子どもたちを取り巻く環境は極めて良くない状況にあること,さらに不器用意識の児童生徒は過半数を超えていることを明らかにするとともに,器用・不器用意識の測定には「作業結果の意識」,「イメージとのギャップ」,「他者からの評価」などの自己評価が指標となることを明らかにした。 さらに,本年度は,中学校1年生を対象に,器用・不器用の意識と具体的な製作処理能力は一致するか実験的に検討した。その結果,器用感を抱く生徒は,不器用意識を抱く生徒より,動作エラー,作業処理時間が少なく,仕上がりの質が高かった。つまり器用・不器用感という自己評価意識は,具体的な作業,いわゆる作業処理時間や仕上がりの質という客観的評価と一致することを明らかにした。 以上のことから,不器用意識は,児童生徒の過半数を超えている現状を正確に認識し,慎重に児童生徒の教育指導にあたる必要があること,さらに子どもたちのものづくりへの意欲は極めて高いといえ,その意欲を維持し高めるためには,多様なものづくりの機会を幼児期から充分に保障するとともに,社会,学校,家庭におけるものづくりの環境を整備する必要があると指摘した。
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