現代民主主義社会の市民を育成するという目的をもった歴史カリキュラムを開発するために、本年度は次の4つを中心に、研究した。 第一は、1998(平成10)年から1999(平成11)年にかけて発表された学習指導要領の内容を分析し、その構造と問題点を解明したことである。小学校、中学校、高等学校の学習指導要領の構造、歴史教育に関わる内容を分析し、その編成構造を検討した。 第二は、昨年度に引き続き、アメリカ、イギリス、ドイツの歴史教育や社会科教育に関連するカリキュラムと教科書を収集し、分析を行ったことである。イギリスの多文化教育論にもとづいた歴史カリキュラム、ドイツの中等用総合社会科教科書を検討し、これらのシリーズや教科書が、現代民主主義社会の形成をカリキュラム編成原理としていることを明らかにした。 第三は、昨年度に引き続き、我が国で先進的に行われている歴史教育実践を収集・収録するとともに、分析し、授業構造、カリキュラム原理を抽出した。外国研究から得た現代民主主義社会形成という原理からみると、現在我が国の中等学校で行われている歴史授業は、この原理とはほど遠いものであり、新たにカリキュラムや単元を作成する必要があることを認識した。 第四は、現代民主主義社会形成を原理とした歴史単元を開発したことである。この原理にもとづいた歴史授業を社会問題史学習として位置づけ、「男女平等」の問題に焦点をあてた歴史単元を開発し、論文として発表した。
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