現代民主主義社会の市民を育成するという目的をもった歴史カリキュラムを開発するために、最終年の本年度は次の4つを中心に、研究した。 第一は、昨年度に引き続き、アメリカ、イギリス、ドイツの歴史教育や社会科教育に関連するカリキュラムと教科書を収集し、分析を行ったことである。イギリスの多文化教育論にもとづいた歴史カリキュラム、ドイツの中等用総合社会科教科書を検討し、これらのシリーズや教科書が、現代民主主義社会の形成をカリキュラム編成原理としていることを明らかにした。 第二は、昨年度に引き続き、我が国で先進的に行われている歴史教育実践を収集・収録するとともに、分析し、授業構造、カリキュラム原理を抽出した。外国研究から得た現代民主主義社会形成という原理からみると、現在我が国の中等学校で行われている歴史授業は、この原理とはほど遠いものであり、新たにカリキュラムや単元を作成する必要があることを認識した。 第三は、現代民主主義社会形成を原理とした歴史・地理単元を開発したことである。この原理にもとづいた歴史・地理授業を社会問題(史)学習として位置づけ、ジェンダーの問題に焦点をあてた日本史単元、革命問題に焦点をあてた世界史単元、環境問題に焦点をあてた地理単元を開発した。 第四は、歴史カリキュラムを民主主義社会の形成から類型化し、カリキュラム編成の組織化について考察し、現在のわが国における歴史カリキュラムや歴史授業をこの類型化に位置づけ、その評価を試みた。
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