小・中学校の体育科教育は、それぞれの役割と責任を自覚し連携して、児童・生徒の発達段階に則しながら、生涯スポーツの主体的実践者を育成するために不可欠な基礎的・基本的教養を養おうとするものでなければならない。この立場から、今回の研究は小学校及び中学校の体育担当教師を対象とし、両学校種における「教育目標・内容・教材」の実態や小学校から中学校への要望、中学校から小学校への要望等についての調査研究とともに、小・中一貫した「教育目標・内容・教材」の配列モデル作成を企図して行った。後者については具体的な提案までには至らなかったが、前者の研究をとおして、(1)体育科教育の指導理念上の課題、(2)実際の指導上の課題、(3)子ども(児童・生徒)の実情からみた課題、(4)小・中学校一貫体育実現のための両校種教師の考え、等の観点から小・中学校一貫体育実現のための条件を引きだすことができた。(1)は、できる・わかる学習過程を中軸としながら意欲・関心の高まりや態度の育成を目指すことに要約される。(2)は運動の技術的特性に子どもが直接にかかわりながら、そのなかでグループ編成や子ども同士の連携を育む学習の組織化に要約される。(3)については、たとえば器械運動やダンスなどの領域とボール運動領域などではその扱いに量的な差別があるため、子どもの技術習得にも格差があることから、各学年で指導すべき内容を明確に定め確実に習得させることを課題として指摘した。(4)については、小・中学校9年間を見通したカリキュラムの策定、両校種教師間の相互理解と連帯意識の重要性が明らかになり、これに関する教師の取り組みを課題として指摘した。
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