本年度はたし算に取り組んだ。一桁たし算(一桁+一桁)では、被加数や加数が大きくなるにつれて難しくなることを明らかにした。しかし、5の扱いは例外的に易しく、4は数の大きさのわりに難しいことがうかがえた。被加数、加数が同数の問題も易しい傾向が見られた。 筆算については、答の桁数(二桁(一桁+一桁を除く)、三桁)別に次の手順で検討を進めた。 1.難易分析と難易構造の検討:答を導くまでの計算過程を参考に演算の難易に関わると思われる要因として、被加数・加数の桁、繰り上がりの有無と回数、被加数・加数・答の中の0の有無・数・位置を抽出し、それらを基準に全問題を類型化し一覧表を作成した。答が二桁のたし算は16類型、三桁では76類型抽出できた。それらについて子どもを対象とした調査を行い統計的に分析し、前述の要因により難易差が生じることを証明した。更に、各タイプの問題と問題に含まれる難易の性質、問題相互に存在する難易差などの構造が理解できる図を作成した。 2.教材の作成:1で得た全類型について、子どもが学習するための具体的問題を一定数生成した。 3.教授支援システムの開発:現場の教諭が利用するための教授支援システムのプログラムを作成した。このシステムは初期画面で演算形態を選択する。第二画面では、類型化した全タイプの問題とそれらの難易構造の理解をユーザに促すために、1で作成した図を画像提示した。更に、2で生成した各タイプの問題をプログラムに加えておくことにより、任意の問題の提示、印刷、あるいは子どもが誤答した問題の診断とその難易の性質を提示するなど、ユーザの利用目的に応じた選択ができるようにした。
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