本年度はひき算に取り組んだ。一桁ひき算(1桁-1桁、2桁-1桁=1桁)の内、繰り下がりのない場合は、10を除き被減数が大きくなるにつれて、5を除き減数または答が2〜7のときに難しくなることを明らかにした。繰り下がりがある場合は、減数の大きい問題が難しかった。 筆算については、被減数の桁数(2桁、3桁)別に次の手順で検討を進めた。 1.難易構造の検討:答を導くまでの計算過程を参考に演算の難易に関わると思われる要因として、減数・答の桁、繰り下がりの有無・位置・回数、被減数・減数・答の中の0の有無・位置・数を設定し、それらを基準に全問題を類型化し一覧表を作成した。被減数が二桁では16類型、三桁では128類型抽出できた。それらについて難易差の存在を検討し、各タイプの問題、問題に含まれる難易の性質、問題相互に存在する難易差などの構造が理解できる図を作成した。 2.教材の作成:1で得た全類型について、子どもが学習するための具体的問題を一定数生成した。 3.教授支援システムの開発:現場の教諭が利用するための教授支援システムのプログラムを作成した。このシステムは初期画面で演算形態を選択する。第二画面では、類型化した全タイプの問題とそれらの難易構造の理解をユーザに促すために、1で作成した図を画像提示した。更に、2で生成した各タイプの問題をプログラムに加えておくことにより、任意の問題の提示、印刷、あるいは子どもが誤答した問題の診断とその難易の性質を提示するなど、ユーザの利用目的に応じた選択ができるようにした。
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