研究概要 |
1、《描画表現研究データシステム》は予定した構造に構築できた。 このシステムで描画活動という数量化できなかった分野が開発されたことで、現代の子ども像に近づけて検証することが可能になった。ただし、作品1枚ごとに作成するデータベースへの入力作業がかなり大変な作業量となり、改良の余地がある。今回もこの「幼児描画画像データベース」に入力作業が障害となった。このデータベースには「描材」「色」「コメント」「描画特徴」「配置特徴」「上下の暗示」「人物表現」のカテゴリーがある。それはすべて「幼児描画画像データベース」に入力しなければ分析できない。本研究では150,000枚に及ぶデータベースに全ての入力は相当の時間を要すると考え、カテゴリーの中の「人物表現」に焦点を絞り入力した結果が前出の「IV集積したデータ結果」である。この報告書では「人物表現」のデータで考察した。 今後はカテゴリーごとの集計や検証考察も重要だが、カテゴリー間の相互検証によって「子どもの実態」に迫ることができると考える。 2、子どもの描画の先行研究が示した「スクリブル」の解釈は"意味のない線""でたらめ"などといった捉え方があった。しかし、「意図的なスクリブル」が3歳の時期にかなり高レベルで意味があることが明らかになった。 3、どの年齢にも頭足表現が確認できた。6歳を過ぎても出現する。 4、円に線を描き足した「頭足人」の出現は4歳過ぎであった。一般的に頭足人の表現は3歳ごろの表現とされていることは事実と異なることになる。 5、頭足表現と胴を描く表現との出現率が交差する第1段階は4歳8ヶ月頃から4歳10ヶ月頃訪れる。幼稚園保育所で言えば3歳児〜4歳児のクラスに相当する。この時期の子どもへの保育や子育てに対し真摯に考え反省が必要である。
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