研究概要 |
本科学研究費による調査研究の最終年度である本年度は,大阪地域でのメインのアクションリサーチを続けながら,近畿圏数地域および他地域数か所の状況について訪問調査等を行った。また,研究者や教育現場関係者,当事者等から情報収集を行った。 これらを通じて,外国から来た子どもたちの多くが日本社会への十全な適応に苦慮しているという状況は,いぜんとして続いていることが分かった。むしろ,「不登校」や「問題行動」などの状況の把握が進むにつれ,その問題の深刻さが指摘されてきている。 日本の教育現場における当該子どもたちへの日本語教育等は,かなりの進展があったと思われる。しかし,それらは,教師からの日本語での指示等が理解できるとか,子どもたち同士の意志疎通が何とかできるという域を超えるものではなく,各教科の学習で一定水準以上の成果が修められるというレベルから見ると,いまだ不十分でしかない。 このような現状からいって,外国から来た子どもたちが自己のアイデンティティーを保ちながら,日本での学力伸張を図るためには,母語と日本語双方での「学習言語」の習得を目指す教育実践を進めながら,バイリンガル,バイカルチュラル(二言語,二文化)能力を養成する教育方法を確立することが必要ではないかと考えるに至った。 また,これらの子どもたちの日本社会への適応は,ホスト社会である日本社会側の教育現場や子どもたちの多文化受容能力を向上させることと不可分であり,今後,併せてそのための教育プログラムの確立ための調査研究も行いたい。
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