今年度は前年度からの日本語とタイ語との構文論的な比較考察を進め、とくに副詞節、副詞句についての分析を行った。タイ語においては副詞と形容詞が同形であることから、しばしば日本語の習得においても母語の干渉が大きいことが指摘される。こうした問題点を鑑み、主として文中の位置について比較考察を行った。その成果は『対照言語学研究』(『対照言語学研究』編集委員会)において発表された。 意味論的研究として、日本語の「もう」と「まだ」に対応するタイ語表現を考察した。日本語の「もう」はもっとも出現頻度の高い副詞であり、また、タイ語の1εεoも文末において様々な意味を含意する。また、日本語の「まだ」に対応するタイ語のyanの用法も多くの用法が観察される。これらの用法を比較することによって、日タイ語のさまざまな言語事実が明らかにされた。この成果は『外国語学会誌』(大東文化大学外国語学会)において発表された。 日本語とタイ語の空間認識をめぐる考察として「ところ」とthi^<^>iの統語論的、意味論的な比較を行った。実質的な意味用法とともに抽象化した用法を「文核」と「文枠」という特徴にまとめた。この成果は『外国語学研究』(大東文化大学大学院外国語学研究科)において発表された。 最終年度にあたり、平成10年度から引き続き行ってきた研究を体系的にまとめる作業を平行して行った。研究成果報告書は全8部と補論から構成され、B5版約400頁に上る。東南アジア語の中心的位置を占めるタイ語と日本語との最初の対照研究論文集としても、各方面での活用、参照が期待される。
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