研究概要 |
構造方程式モデルによって因果関係を同定することはかなりの困難を伴う作業である。可能なモデルの数は極めて多く、その中のひとつのみを真の因果関係モデルであると断定することは誤解を生みやすい。条件が統制された実験データと違って、相関調査データにはそれだけの決定力はない。本研究では、構造方程式の真のモデル探しを統計的仮説検定のアプローチではなく、モデル選択として捕らえる。すなわち、構造方程式の可能なモデルを理論的検討によってかなりの少数(たとえば、3,4個)にしぼり、データによってどのモデルを真とするかを定量的に捕らえることである。選択されなかったモデルも切り捨てられるのではなく、理論的検討によっては依然として、真である可能性を捨てない。 構造方程式モデルの選択基準として著名なのは、尤度比などの検定方式、GFIなどの適合度、情報量基準などであるが、先に述べたように尤度比は、相関調査データにはなじまない。また、GFIなどの適合度は基本的に記述であり、ルールを生成する力はない。情報量基準がこの中ではもっとも妥当であると考えるが、しかし、AICなどは将来のデータに期待される情報量の近似である。 我々は、いくつかの真のモデル候補を真とする事後確率を直接計算する方法を提案した。また、この計算が複雑過ぎてできないときのために、ヘシアン行列を用いた簡易基準を提案した。この基準は、まだ公表していないが、300例の人口データに適用した結果、他の適合度基準や情報量基準のどれよりも人口データを発生させた真のモデルを正確に同定した。
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