研究概要 |
人の顎骨の成長異常に対して行われた歯科的治療の効果と顎骨の成長パターンの関連性を調べ,その結果を実際の臨床治療に応用したいという要望のもとに本研究を行った。人の顔貌は様々であり,その骨格の成長パターンは多様性をもっている。与えられた問題を,個人変動を伴うアンバランス型の成長データの分類という統計的問題として捉え,方法論および解析を効率よく実行するためのソフトウエアーの開発を行った。 研究実績の概要は以下のとおりである。 (1)顔面骨格の成長に関するデータベースを作成した。具体的な内容は、個人の顔面骨格の各部位の経年的な計測値(X線フィルムを用いて測定)、観察時点での年齢および治療効果の有無を調べたものである。 (2)得られた計測データを用いて顔面の成長の過程を視覚化できるソフトウエアーを開発した。 (3)成長曲線としてゴンペルツモデルを用いて,推定されたパラメータを個人の成長の要約量として捉えた。それらをk-means法により分類することにより,成長のパターンに影響をおよぼしていると思われる潜在的な背景要因あるいは外れ値の混入の探索を試みた。 (4)顎骨の成長に対して線形回帰モデルを仮定し,個体差を推定された回帰係数の変動として正規混合モデルを用いて組み込んだ拡張ランダム効果モデルを新しく提案した。 (5)欠落値や外れ値が想定される現実のデータのもとでの正規混合モデルの推定,およびそれを実行するためのソフトウエアーの開発を行った。
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