研究概要 |
完全データが与えられた場合の多変量正規分布の母数推定論は,多変量解析の多くの書物において取り上げられている題材である。本研究では、主に不完全データもしくはミッシング(欠測)のあるデータを含む場合の統計解析法について研究し,つぎの結果を得た。 (1)2変量正規分布の多標本問題において,各クラス内の平均,分散が等しくない場合に,共通関数係数の最犬推定および制限付き最犬推定について扱い,欠測を含むデータからの推定量の漸近分散を求め漸近分散安定化変換を構成した。結果は,もちろん,完全データの場合を含む。また,シミュレーションにより共通相関係数の最犬推定値および制限付き最犬推定値の挙動を調べた。不完全データの使用により,最犬推定法および制限付き最犬推定法の双方とも,推定値の平均2乗誤差を減少させる。減少の程度は,共通相関係数の絶対値が大きいとき,もしくは組標本の大きさが小さいとき,大きい。 (2)2つの多変量正規分布からの完全データから分布の類似性尺度としての松下の類似の最犬推定法および制限付き最犬推定を利用する推定法について述べ,さらに偏り修正法について調べた。この研究は,不完全データの場合への予備的研究として位置づけられるものである。次年度に,不完全データの場合に松下類似度の最犬推定および制限付き最犬推定を利用する推定法について調べる予定である。 (3)その他として,介護休業制度を利用して働く女性の生活の質,WHOQOL法を用いてのがん患者のフィールド研究,多変量逆三項分布を含むLagrange分布族の構成,Lagrange分布族とある極限形としての逆ガウス型分布との関係について調べた。
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