研究概要 |
(1)離散確率過程では、時刻Nにおける確率変数Xに対する分布関数P(X,θ,N)は一般に時刻Nに陽に依存する。モデルを特徴づけるパラメータθが連続の場合、情報幾何学の方法を利用して,各時刻Nにおける確率密度関数族S_N≡{P(X,θ,N)|θ∈Ω}の中に計量テンソルと接続を定義できる。各時刻の統計多様体S_Nを積み上げることによって一般化統計多様体S≡US_Nが定義される。このような一般化統計多様体に情報幾何学の多くの概念が一般化できることを示した。特に、双対構造が存在する具体的例を構築した。 (2)BoseおよびFermi-Diracの量子気体、Gentileの中間統計にしたがう量子気体、Wuの分数統計にしたがう量子気体について、熱力学量のゆらぎと熱力学的状態空間のRiemannスカラー曲率との関係を調べた。その結果、Riemannスカラー曲率は熱力学的不確定性関係の不確定積が最小値からどの程度ずれるか示す尺度であることを発見した。 (3)Bose気体のRiemannスカラー曲率がBose凝縮転移点で発散する振舞いを深く探求するために、Bose系のより複雑なモデルを研究した。超伝導の自由ペアロン描像モデルをとりあげ、ペアロン(ボソン)が臨界温度以上でも存在するか否かをまず調べた。臨界温度以上での超伝導物質La_<2-X>Sr_XCuO_4の感受率の実験データは動くペアロンの存在を仮定すれば矛盾なく説明できることを示した。このモデルのスカラー曲率の振舞いについては今後の課題として残されている。 (4)確率過程の視点から歩行運動をとらえ、歩行のゆらぎをコンピュータ画像解析によって行なう実験方法をテストし、その有効性を確認した。
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