本研究では母数モデルに見られる直交性に着目した研究を行った。具体的にはイ)高次元母数の直交性について強弱の様々な概念を整理する。ロ)対数線形モデルが理論的に興味深いことが見えてきた。ハ)スタイン推定量への新しい視点を与える。その上でベイズ推論の研究を行った。 高次元母数モデルについての研究は現在において最も期待されている分野である。本研究では理論的な整備を通して、一見遠廻りなしかし本筋の接近を行う。統計のモデルのより深い理解と、その理解の上に立ったスタイン推定量、対数線形モデルの構造が興味深い。具体的な例では良い性質をもつ場合が多いけれどもこれを理論的に整備する事が難しい。しかし2項分布の下での非劣性検定を見通し良く整理することができた。対数線形モデルは制約付最尤法(REML)との関係が見えてきた。 その後の研究によって直交性の概念が推定方程式あるいはベイズ推測で重要な役割を果たすことが明確になってきた。直交性は尤度との関連で理解されてきたからその延長とみなすことができる。これらの方法とも関連しても不思議ではない。1つの成果として経験ベイズ法による平滑化法を事前分布の仮定をおかないで説明することができた。また逆に事前分布と標本分布の双対性により双対共役事前分布を定義した。これはベイズ推測で用いられる共役事前分布の拡張である。この研究を通して確認できたことは直交性の概念はユークリッド距離ではなくて、双対エントロピー(Kullback-Leibler separator)で定義する方が問題をより統一的に扱えることである。
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