研究概要 |
平成12年度は,これまでに検討してきた情報の多重伝送の概念を一般化したチップ内/チップ間CDMA(Code-Division Multiple Access)通信技術の可能性を検討し,今後の研究課題を明らかにした. 1.2値M系列を多重化キャリアとしたLSIシステムの概念は,任意の直交符号をキャリアとする一般的なチップ内/チップ間CDMA通信方式に拡張することが可能である.一方,チップ内/チップ間CDMA通信における最大の問題は,配線遅延による符号系列の位相オフセット誤差であり,これがシステムの誤動作の主要因になる可能性がある.これを解決するために,多値M系列をキャリアとする多値CDMAの可能性を検討した.位相オフセット誤差の度合いに応じて,適切な多値M系列をキャリアとして使用することにより,誤差を完全にキャンセルできることを明らかにした. 2.多値CDMAをニューラルネットワークなどに適用した場合について総合的な評価を行った.具体的には,ホップフィールド型ニューラルネットワークに関して,2値CDMA方式と多値CDMA方式を比較し,前者は位相オフセット誤差の影響を強く受けるのに対して,多値CDMA方式では位相オフセット誤差の影響を受けない構成が可能であることを明らかにした. 3.CDMA方式と同様に配線量を減少可能な回路技術として,直接的に多値ディジットを信号として用いる多値論理方式があげられる.両者を比較した結果,ニューラルネットワークなどのアナログ信号配線の多いアーキテクチャおよびチップ間通信などではCDMA方式が有効であり,シグナルプロセッサなどのディジタル演算を多用する応用では多値論理方式が適していると予想される.この結果を踏まえ,多値論理方式による実現を想定した各種の算術演算アルゴリズムを発案し,その実現についても基礎的検討を行った.
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