研究概要 |
多諧調の濃淡画像を白黒2値画像で表現するための技術であるディジタルハーフトーニングは,実用的に重要な問題の一つであるが,これまで出力画像の品質に関する合理的な評価尺度について論じた研究は少なく,アルゴリズムの良し悪しは人間の目視で主観的に評価されることが多かった.本研究では,合理的と思われる数学的基準を設定して,その基準の下で最適な解を求める問題の本質的な計算複雑度を解析するとともに,準最適な解を得るための近似解法の開発も視野にいれて研究を行ってきた. 本研究では理論と応用の融合を目指すために,従来から提案されている手法を詳しく調査しかつそれらの手法をプログラムの形に実現することによって提案手法との比較を行った.プログラム開発に関しては着実な成果を上げることができ,プログラムライブラリの形にまとめることができた.次に,従来の手法とは違って,数学的基準を設けて最適なハーフトーン画像を得る問題の計算複雑度について考察し,最も単純なモデルにおいても多項式時間での解法,つまり現実的な時間で最適解を得る方法が存在しないことを証明した.この結果は理論計算機科学の国際会議でも発表し,高い評価を得た.さらに,この問題が計算幾何学におけるディスクレパンシーの問題と密接に関連していることを発見し,最悪の場合の性能を保証することができるアルゴリズムを開発した.これとは全く別の方向の手法としてグラフ理論において長年研究されてきたネットワークフローの技術が応用できることを発見し,巨大なネットワーク問題を解くことにより緩和した基準の下では最適な解を多項式時間で求めることができることを証明し,実際にプログラミングをして計算機実験を行った.
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