研究概要 |
1.ソフトウェア分散開発においては、共有情報の変更において関係者の承認をとるために長時間の待ち状態が発生し、作業効率の大巾な低下をもたらす。このためには変更要求の承認をとる活動とは独立に変更作業を進めるモデルと機構が必要になる。本研究により、作業の並列化による効率改善、一貫性の維持による品質の改善をもたらしうる「未来版管理モデル」と「未来版管理機構」を開発した。 2.未来版管理モデルは、従来の版管理モデルに対して、変更要求空間、永続版空間、未来版空間の3つの版管理空間からなり、変更要求の承認を待たずに、永続版空間から未来版空間にテェックアウトすることにより、先行して、並列に作業を進めることを可能にする。このとき生じる競合状態は汚染マークにより管理される。 3.未来デルタ機構と汚染マーキング機構の原理をCVS版管理機構を利用して実装し,未来版管理モデルの有効性を確認した。実現したシステムは以下のような機能を有する。(1)永続版空間から未来版空間へのチェックアウト機能 (2)未来版空間から永続版空間へのチェックイン機能 (3)未来版の複製をとる機能、(4)2つの未来版をマージする機能、(5)競合の検知・解消支援機能、(6)版の進化に関する情報提示機能 4.変更要求は主に電子メールを利用してなされることが多い。変更要求管理の一環として、電子メール群の討議スレッドを、会話分析の手法を利用して抽出するツールを開発した。 両年度にわたる研究の結果,未来デルタ機構と汚染マーキング機構および未来版管理システムを開発し、所期の成果を達成した。
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