広域命令レベル並列によるマイクロプロセッサの高性能化に関する研究

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10680348
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 安藤 秀樹 名古屋大学, 工学研究科, 助教授 (40293667)
• キーワード: マイクロプロセッサ / マルチプロセッサ / 命令レベル並列

研究概要

本研究は、整数系プログラムに対して、命令レベルの並列性を効率良く引き出すための複数のプロセッサをチップ上に持つアーキテクチャと、それを最大限に利用するコンパイラ技術を開発することである。本年度の研究実績は以下の通りである。第一に、広域に存在する命令レベル並列をコンパイラにより引き出す際、プログラムにおけるどのようなレベルに着目すれば、どの程度の並列性を引き出せるかを調査したことである。これにより整数系プログラムにおいては、従来のループ・レベルでは十分な並列性を引き出すことはできず、基本ブロック・レベルで引き出すことが必要であることがわかった。またこの時の並列性は、単一の制御流から得られる局所的な並列性に比べ、非常に多いことがわかった。第二に、命令レベルの並列性を引き出すために鍵となる基本的技術である分岐予測の精度を改善する機構考案したことである。これまでの分岐予測は全て、将来の分岐方向が過去の分岐方向に相関があることを利用するものであるが、本機構は、分岐命令のソース・オペランド値とオペコードを予測することにより予測するものである。第三に、分岐予測誤りによるペナルティを緩和するために、分岐の予測の確からしさを高精度に推定する機構を考案したことである。これにより、予測が困難な分岐を正確に選びだし、分岐の両側を同時に実行することにより、予測ミスペナルティを被ることを回避できる。第四に、大容量・多ポート化するキャッシュのレイテンシを削減するためのアーキテクチャを考案したことである。本アーキテクチャは、キャッシュを複数のバンクに分割し、新たに考案したバンク予測により投機的にアクセスするものである。

研究成果

• [文献書誌] 小林良太郎,山田祐司,安藤秀樹,島田俊夫: "2レベル表方式による分岐先バッファ"情報処理学会論文誌. 41・5. 1351-1359 (2000)
• [文献書誌] 嶋田創,安藤秀樹,島田俊夫: "クロスバスイッチをなくしたマルチバンクキャッシュ"2000年並列処理シンポジウムJSPP2000. 107-114 (2000)
• [文献書誌] 戸田聡,布施裕基,片山清和,安藤秀樹,島田俊夫: "値予測を用いた分岐予測"2000年並列処理シンポジウムJSPP2000. 237-244 (2000)
• [文献書誌] 片山清和,安藤秀樹,島田俊夫: "分岐フィルタリングによる両パス実行性能の改善"2000年並列処理シンポジウムJSPP2000. 253-260 (2000)
• [文献書誌] 加納正晃,小林良太郎,安藤秀樹,島田俊夫: "非数値計算プログラムにおけるスレッド・レベル並列の限界"情報処理学会研究報告2000-ARC-140. 55-60 (2000)
• [文献書誌] 小林良太郎,小川行宏,岩田充晃,安藤秀樹,島田俊夫: "非数値計算応用向けスレッド・レベル並列処理マルチプロセッサ・アーキテクチャSKY"情報処理学会論文誌. 42・2. 349-366 (2001)