研究概要 |
平成12年度の研究はほぼ年度始めの予定通り行った。すなわち、本年度は複雑系としての経済現象の解析とその予測に焦点を絞り、具体的な経済データの解析を手がけまた経済物理学としての視点の樹立を目標とした。 8月に理化学研究所脳研究グループの好意で株価の短期変動データに触れる機会がありそれをもとに経済データの実証的解析の方向を開拓することができた。部分的ではあるがどのように疎視化をすれば規則が見えるかについての興味ある知見が得られた。 正のフィードバックを持つモデルのシミュレーションから得られた協力現象を報告した昨年11月の東和統計物理学国際会議で発表した論文が本年7月にStatistical Physicsという本に出版された。 夏に論文公募された日経新聞社主宰の国際学会"経済物理学の展望"に応募した論文が採択されたので11月14-17日に参加した。欧米からも多くの参加者があり,第一線の研究者を知ると共に,新たな刺激を受けることができた。 また,以前から計画していた第一回情報科学国際会議(INFORMATION2000)を10月16-19日に福岡で行ったが,そこで提案した分科会"物理学と社会科学の接点"に5名の発表があり好評を得た。またそこで"複雑系:物理学の道具立てでどこまで行けるか?"と題する招待講演を行ったが多数の来聴を得た。第二回目を2年後に北京で行うことになり組織グループに入るようにと後に要請された。 自己研修の一部として時系列解析,統計学の新しい動向,情報科学と統計物理学等に関連した研究会に機会のあるたびに出席した。これらは年度開始後に予定が発表されるため年度の途中で参加を決定した。9/27-30の逆問題研究会(統計数理研),10/24-28のBernoulli-RIKEN脳科学2000シンポジウム(理化学研究所&統計数理研),2/8の定例研究会「統計学とニューラルネットワークス・学習の新しい統合に向けて(第4回)」(統計数理研)等である。 これらの活動を通して,総合研究大学院大学のグループ研究を基盤にした,金融問題の勉強会"経済学"(http://koryu.soken.ac.jp)にも多方面から人材が集まるようになり内容も充実してきた。 筑波大学大学院を中心にした、インターネット利用による仮想マーケット実験への参入は当初考えたようには進んでいないがSCSによる会議には参加し学生への啓蒙活動としては有益であった。
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