高エネルギー物理学で取り扱うDiracのγ行列の処理に関しては通常の数式処理で行った場合に出力結果が巨大化し、実際の数値計算が極めて困難になる。 本研究においては、出力結果を短縮するためのアルゴリズムの研究を行うと共に、実際のプログラムを作成した。行列要素の計算の中で現われるDiracのγ行列については、数式処理パッケージREDUCEを用い、トレースを取らない場合には、記号のまま残すようにした。最終的に行列要素は、外線の運動量の内積およびこのγ行列の記号の多項式で表される。このγ行列の記号の部分は関数として数値的に取り扱うことができるが、同一の記号が多数出現する。またこれらの記号の部分を配列名に置き換え、更に他の多項式部分についてもパターンマッチ処理を後処理として行うようにした。これにより格段に速く行列要素を数値計算することが可能になった。 また、自動計算プログラム(GRACEシステム)に組み込みを行い、更にスーパーコンピュータで高速に処理するためのベクトル化されたプログラム生成のプログラムも開発した。 今後、より高エネルギーでより精度の高い実験が求められたときこのような数値計算のための高速化のための研究が生かされると考えられる。
|