素粒子反応計算においては、ファインマン図形に対してDirac代数を適用し対応するファインマン振幅の式を求め、それを数値的に求めることが必要である。素粒子理論における標準模型や超対称性理論の模型におけるDirac代数の処理を確立して、摂動論の0次(ツリー)および1次(1ループ補正)のファインマン振幅の式を求めるプログラムを作成し、実際の物理解析に応用した。特に手計算が困難になるような問題(外部が全部で6粒子になる問題)について、計算可能になるようなアルゴリズムについて研究を行った。開発を行ったプログラムは、数式処理プログラムREDUCEの入力となるプログラムを生成するものである。その出力した式の正当性を検査するために、FORMという数式処理プログラムのためのプログラム生成をも行い、数値的に両者の式が一致することを確認した。またループ用のファインマン振幅を計算する場合において、REDUCE用のプログラムでは長大な時間を要する場合や計算機のメモリ不足で計算不可能な場合があったが、Dirac行列の処理のアルゴリズムを研究してプログラムの改良を重ね、計算可能になった。これらの処理によるファインマン振幅の式の正当性については他システムを利用する他に、もともとの物理にゲージパラメータを入れて、パラメータを変化させたときの不変性を検査することも行い、システムの信頼性を高めることができた。 この研究により巨大な1ループ補正計算を自動化して計算することが可能になったことを明確に示すことができたのは有意義であり、実際の物理解析等に応用していきたい。また更にファインマン振幅をヘリシティー振幅で計算するアルゴリズムについても研究を続ける必要がある。
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