研究概要 |
本研究は,用例からの帰納的学習に基づく機械翻訳手法において,翻訳ルールの学習過程に遺伝的アルゴリズムを適用して,少量の用例データからの翻訳ルールの生成,適用すべきルールの高度な探索,あるいは誤って獲得された不要なルールの効率的な消去等の手法を見出すことを中心とし,翻訳実験による性能評価を行って手法の実用性を実証し,用例学習型自然言語処理手法における帰納的学習手法の有効性と実用性を確認しようとするものである. 以下,本研究で得られた主な研究成果を示す. 1.学習型機械翻訳に遺伝的アルゴリズムを適用する手法の実証実験として,旅行用英会話ガイドブックの例文を用いた実験を行い,状況に適合した訳文が得られることを確認した. 2.実験の結果,淘汰処理のみでは除去できない無効な翻訳ルールが生成される場合があることが見出されたので,交叉処理による新翻訳例の生成に際し,既存翻訳例との類似度を制約条件として交叉位置を決定する手法を開発し,翻訳性能を向上させることができた. 3.複数の訳語からの訳語選択問題について,本手法を応用したアルゴリズムを開発して実験を行い,高精度な訳語選択が可能であることを確認した. 4.翻訳例コーパス中の原言語文-翻訳文対から類似した翻訳例を見出して,帰納的学習により翻訳パターンを抽出し それに基づいて訳文を生成する手法の研究を行い,原言語と訳語の単語対間の対応関係決定法に関する新たな手法を提案し,実験により有効性を確認することができた. 5.この他,表層文から意味表現への変換規則の獲得,代名詞照応関係の決定など,自然言語処理の種々の課題に対する帰納的学習手法の有効性について見通しを得ることができた.
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