研究概要 |
フレーム構造論理という新しい論理体系の構築と応用を目指し,本年度は以下のような基盤的研究を行った. 1. 体系の拡張:フレーム構造論理の基本体系に,否定概念に相当する補元演算子と集合概念に相当する結(選言)演算子を導入し,体系の表現能力を拡張した.これによって, 「動植物(動物+植物)」, 「太郎と花子と次郎」などの複合オブジェクトを構造的に記述することが可能となり,さらに, 「αはβでない」,「αは属性pの値としてβを持たない」等のような否定関係の表現もできるようになった.このような拡張体系を公理的体系として構築し,ブール束を土台とする意味論の下での完全性を証明した. 2. 推論手続き:計算機上での応用を想定し,基本体系に対する機械的推論手続きを与え,その完全性,決定可能性を証明した.また,この手続きを実際に計算機上にインプリメントし,推論システムを試作した. 3. 自然言語の意味解析:日本語における連体修飾の「外の関係」に関して,試験的にその意味構造を解析した.その結果,論理体系の今後の拡張方針(特に,自然言語における高階的意味表現の記述法)に関して手がかりを得た. 以上のような成果を元に,今後は, 「αはβをvする」等のような動詞関係(いわゆる多項関係)や「αがvするβ」等のような連体修飾表現および, 「すべてのαを・・・」や「あるαを・・・」等のような限量関係を構造的に記述できるような体系を構築していく予定である.なお,上記1,2に関する成果をまとめた論文は現在投稿中である.
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