本研究では、分散協調下で問題解決を行い、互いに知識を交換し、さらに、組織的に学習するエージェントシステムの原理を解明し、進化計算手法を適用することで、新たな組織行動が創発するようなモデルを構築してきた。さらに、提案した手法の実問題への適用を試みた。これらの成果は以下にまとめられる。 (1)組織学習指向型分類子システムの原理に関する研究 組織学習指向型分類子システムは、学習分類子システムの概念をマルチエージェントに拡張し、知識交換と学習機構をもたせた分散協調型問題解決システムである。これを、プリント基板部品配置問題に適用し、専門家の結果を凌ぐ結果を得た。また、この動作原理に関する理論的な分析を行い、(3)で記述するような実問題への適用を試みた。 (2)逆向きシミエレーション手法の開発と社会シミュレーションへの適用 逆向きシミュレーションとは、従来のシミュレーション方法とは反対に、一般の逆問題を解く方法に従う。すなわち要素の設計・望ましい評価関数の設定・シミュレーションの実行・パラメタの自動調整からなるサイクルを用いる。このために遺伝的アルゴリズムの新しい方法を開発した。さらに、これを人工社会シミュレータTRURLに適用し、新しい知見を得た。 (3)各種の実問題への適用 開発した手法を実規模の問題に適用して、我々のアプローチの妥当性について評価を行った。これには、(1)知的ICカードを分散環境で利用するシステムFairy Wing、(2)エコマーケティングにおける生産者・消費者の共進化モデル、(3)ナレッジマネジメントにおけるナレッジチェーンモデル、(4)国際電話料金の交渉モデル、(5)自律分散型サプライチェーンマネジメントモデル、(6)情報材の共同分配規範モデル、(7)プリント基板部品配置設計などの問題が含まれる。
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