研究概要 |
機能的磁気共鳴画像(fMRI)は,視聴覚の種々の刺激に対する脳の賦活部位を非侵襲的に画像化することが可能である.しかし,fMRI撮像時には大音量の騒音が発生するので,音韻知覚判断実験にfMRIを用いる場合,遮音対策なしには実験が困難である.しかし,通常の遮音材による遮音対策だけでは低周波数域の遮音性能が不足する.そこで本研究では,とくに低周波数域で効果のある能動騒音制御技術を併用して,大音量の騒音下においても音声刺激の聴取を可能にする検討を行ってきた.具体的には, 1. 機能的磁気共鳴画像の撮像時の音響特性を測定した.音響雑音の音圧,波形,傾斜磁場電流波形の時間関係を測定し,周波数スペクトル分析を行った. 2. 機能的磁気共鳴画像の撮像時の音響雑音の再現性について検討した. 3. 能動騒音制御のプロトタイプ・システムの開発を行ない,予めMRI装置内で録音した音響雑音をスピーカーより再生して能動騒音制御の実験をオフラインで行えるシステムを作成した.このシステムを用いた予備実験の結果,能動騒音制御により1kHz以下の周波数帯域において音響雑音を最大17dB減衰させることができた. 4. 能動騒音制御のための非磁性スピーカおよびマイクロフォンについて,種々の方式のイヤホンやマイクロフォンについて実際にMRIの撮像をし,強磁場の影響を受けず画像にアーティファクトを生じさせないものを探し,現在プロトタイプ・イヤホンを開発中である. 筆者らは,この検討結果の一部を平成10年日本音響学会秋季研究発表会で発表した.
|