研究概要 |
本年度は,多くのユーザ間の交渉を効果的にサポートするために,エージェント間の新たな協調モデルの実現を目指した.ここでは,効用理論に基づくユーザの効用の定義,および協調のモデル化を試みた,具体的には,既に得られている筆者らの研究成果である説得プロトコルを拡張することにより,互いに交渉ができるような知的なモバイルエージェントに基づくグループ代替案選択支援システムの実装方式を提案し,関連学会へ発表した.本研究の成果は以下の3点である.(1)エージェント間の多重交渉方式(複数の交渉結果を同時に得ることができる)を提案した. (2)AHP機構(ユーザの主観的評価の数量化の支援)や交渉エージェントへのためのプログラムを持ったエージェントを転送するためのプログラミング技法を確立した.(3)グループ意思決定においてユーザの個人的な主観的評価に関するプライバシーを保つ方式を明らかにした.エージェント間の多重交渉の利点は次のように示せる.まず,複数の交渉結果を同時に得ることによって,ユーザの納得がより得られやすい結果を得ることができた.次に,人間が実際に実行することが困難な多重交渉を,エージェントの多重交渉によって実現できた.モバイルエージェントを導入したことによって,ネットワークの負荷が高くても効率的にエージェント間の交渉を実行でき,携帯型端末などを用いて遠隔地からグループの意思決定に参加することを可能とした. 次年度は,筆者等が開発し評価を蓄積しつつある制約論理型言語RXFに基づくモバイルエージェントのモデル化を明確化し,広域情報ネットワークにおけるモバイルエージェントの制御機構の実装方式を明らかにする.さらに,モバイルエージェントに基づく効果的な分散型意思決定支援機構の構築に向けて,試作済みのグループ代替案選択支援システムを拡張することにより,応用範囲の広い意思決定支援モデルを明らかにする.
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