研究概要 |
計算機ネットワークとマルチメディアの基盤技術の確立と普及によって,計算機の教育への利用に対して社会一般の期待が高まっている。これは計算機の魅力的な新しい機能への単純な期待だけではなく,新しい機能がもたらす学習の形態の質的な変革への期待をも含んでいる。知識の源泉であり,深い理解に至るうえで重要な「なぜ?」「どうして?」という自然な問いかけを学習者が自発的に抱き,その答えを探求する機会を計算機によって増大させることが期待されている。このような期待に対して情報工学は,ネットワーク技術,マルチメディアという基盤技術整備で応えてはいるが,残念ながらその利用の形態に関して十分な成果が積み上げられているとはいいがたい。そこで本研究では,新しい基盤技術のうえで新しい学習の形態を支える計算機利用の方法論の確立を目指して,学習集団の協調的学習を支援するための知識工学的なモデルを明らかし、その実用可能性をシステム構築を通じて検証することを目的とした。 具体的な研究成果は以下のとおりである。 (1) 協調学習に特徴的な学習目的、学習グループの形態などの協調学習を支援するための基本的な知識を収集し、知識ベース化した, (2) 協調学習を支援するための計算機モデルを実装する。 (3) ネットワーク上に分散した個々の学習環境が相互にネゴシェーションし適切な協調学習環境を形成するための枠組み(知識レベルでの通信規約)を実装した。 (4) 物理(高校1,2年程度)の実用規模の協調学習教材を実装し、運用実験を行いながら支援モデルの問題点を明らかにした。 (5) 上記の研究で得られた成果を、協調学習支援システムを構築するための再利用可能な知識ベース(オントロジー)として体系化した。
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