研究概要 |
帰納的論理プログラミング(ILP)は,関係記述の帰納的学習のための理論と実用的な学習アルゴリズムを研究する分野であるが,従来の研究では,学習されるプログラムの形式として,主に確定ホーンプログラムのような単調なクラスのものが考えられていた.本研究では,常識的なデフォルト規則や分類学的階層知識などを学習するために,非単調推論なクラスを学習できる帰納推論の枠組を考案し,不完全な情報下での学習方式の理論の確立とその実装システムの開発を目的としている.本研究の研究期間は2年であり初年度に当たる今年度は、デフォルト規則をELP形式で学習するための理論的検討とこの理論に基づいた試作システムの開発を行った.本年度の研究実績は以下の通りである。 1. ELPの学習のための基礎理論の整備:一般のELP形式をもつ背景知識の下で,正負例をリテラル集合として与えたときに,ELP形式によるプログラムを出力するシステムLELPに関して,その正当性の証明を含む理論的整備を行った.また,アブダクション(発想)の機能を有するアブダクティブ論理プログラムを出力とするようなLELPの変形についても基礎的な考察を行った. 2. ELP学習システムの試作:正例をすべてカバーする一般規則を生成するシステムを,ボトムアップおよびトップダウンの2種のアルゴリズムを用いて開発した.また,一般規則を特殊化することで,負例をカバーしないようなデフォルト規則に変換するアルゴリズムや,例外の例外も扱えるようなデフォルト打ち消し規則の生成システムも開発した.さらに,階層的なデフォルトや非決定的規則が扱えるようにシステムを拡張した.得られたLELPにより,データベース上での知識発見の予備実験も行った.
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