研究概要 |
平成10年度は,本研究の代表者らが提案してきたモジュール分割型強化学習器(MQLA)に基づくマルチエージェント強化学習手法を発展させることによって,自律エージェント群に,適切なモジュール構造を自動的に獲得させながら,それらが採用すべき協調行動を効果的に自己組織化させるための基礎的な研究を行った. 本研究ではまず,模擬ドッジボールゲームIIと称するマルチエージェント学習手法のベンチマーク問題を設計し,この問題への適用事例を通して,(i)この学習手法によって獲得される行動政策の最適性および(ii)エージェント群のモジュール構造がそれらの学習性能に与える効果に関する種々の実験を行った.これらの実験を通して,MQLAによって実装されたエージェント群は,適切なモジュール構造を採用することによって,良好な行動政策を獲得し得ることを確認すると共に,適切なモジュール構造を設計することがMQLAに基づくマルチエージェント強化学習手法の成功の鍵となることを示した. 本研究ではさらに,山登り法的な接近法によって,エージェント群にとって適切なモジュール構造を自動的に獲得することを試みた.本研究は,エージェント群のモジュール構造の自動獲得を目指した予備的なものであり,これを現実的なマルチエージェントシステムに適用するためには,数多くの課題が残されている.しかし,本研究によって自動的に獲得されたモジュール構造をもつエージェント群の性能は,人手によって設計されたモジュール構造をもつエージェント群の性能を凌駕しており,モジュール構造の自動獲得を目指した研究の意義を示している.
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