平成11年度においては、量子ニューロ計算によるニューラルネットワークモデルの計算能力について関数同定問題などの具体的問題を中心としてその情報処理能力の再評価を行うとともに、上記研究成果を発展させて画像圧縮復元問題に適用しこれらの大規模問題における量子描像ニューラルネットワークの性能評価や量子描像ニューロンにおいて導かれた位相パラメータや反転パラメータの情報処理における役割を明確にし得た。この解析結果においては、本モデルが学習係数に依存せずに学習できること、及び数回の学習で問題を獲得できるなど従来のニューロンモデルよりも優れた学習能力を有することを再評価し得た。このことから、ニューロン状態を量子力学的に記述し、量子計算の量子回路形式に対応した量子描像ニューラルネットワークモデルの有効性を確立し得たと考える。さらに次段階として、注意のダイナミックな切り替え現象を記述しうる法則や変数を模索し、その可能な数理的取り扱い方法を確立することを目的に認知交替実験研究を進めた。この成果に基づいて、認知の交代想起や注意の配分を、ニューロンから構成される大規模複雑系としての脳における量子情報処理的な創発機構とみなし、人間の情報処理の入出力系のバインディングに果たす注意や意識の役割の数理的記述を検討し、量子ニューロ連想紀憶モデルの理論的基礎を確立していくことが今後の課題であるが、理論的枠組を構成することができた点で、当初の計画は達成し得たと考える。
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