研究課題/領域番号 |
10680391
|
研究機関 | 姫路工業大学 |
研究代表者 |
松井 伸之 姫路工業大学, 工学部, 教授 (10173783)
|
研究分担者 |
西村 治彦 兵庫教育大学, 学校教育学部, 教授 (40218201)
|
キーワード | 量子計算 / 量子ビットニューロン / ニューラルネットワーク / 注意機能 / 認知交代 / 結合振動子 / カオス / 確率共振 |
研究概要 |
平成12年度においては、実用上広く用いられている階層型ニューラルネットワークに量子ビットニューロンモデルを適用してその適用範囲を広げるとともに、理論的枠組の整備および厳密化を目的として、従来の複素数値階層型ニューラルネットワークとの情報処理能力差を4ビットパリティチェック問題や関数同定問題をベンチマークとして詳細に調べた。また4ビットパリティチェック問題においては、他の観点から従来型の改良の例として、確率共振を導入した実数値階層型ニューラルネットワークも提案してその性能を調べた。その結果、ニューラルネットワークにおけるパラメータ総数100程度規模の実用的な学習問題に対して得られた学習性能図から、本モデルは、従来型モデルに比較して、学習回数(計算時間)及び学習収束性の点で高い学習能力を有することを示し得た。この学習能力の発現は単にニューロンパラメータの複素数値化やそれによる有界な位相記述を導入したことのみによるものではなく、ニューロンの発火、非発火の量子重ね合わせ状態記述と確率解釈に起因していることも数値実験を通じて指摘し得た。このようにニューロコンピューティングと量子計算に基づく量子描像との融合は学習に対する性能向上の促進をもたらす効果のあることを明らかにし、量子ニューロ情報処理の計算論的枠組を定式化し得た点及びこれらの成果を国内外に広く発表できた点では、当初の計画は達成し得たと考える。しかしながら、注意の切り替えとしての認知交代現象に対するモデル化については、認知実験結果の解析を行い、その結合振動子型ニューラルネットワークモデルおよびカオスニューラルネットワークモデルによる記述を導き得ているが、量子ニューロ情報処理との融合には至らず、これらと量子ビットニューロンとの関連を明確にすることなどは今後の課題であると考えている。
|