研究概要 |
1. ストリーム・セグリゲーションにおける音程はずれ検知能力の影響 ストリーム・セグリゲーション(音脈分凝)のための基本要素としての音高知覚に関して,継時的な音列に対する音程はずれの検知限の事前情報依存性(現在の音高と次の音高の音程を知らせておくことが,音程はずれの判断にどのように影響するか)をまとめた.事前情報を与えられた場合は音程はずれの検知がより範疇的になることを明らかにした. 2. 2重奏の分離のための基本周波数の分離抽出 2重奏の分離について,その基礎技術である基本周波数の分離抽出を,ヴァイオリン2重奏,フルート2重奏,ピアノ2重音について検討し,調波的関係にある2重奏に対しても60〜90%の精度で音名を同定できるアルゴリズムを開発した.この手法は,対象とする楽器固有の音響特性やアドホックなパラメータを使っていないので,適用範囲が広い. 3. 時間差ステレオの実現可能性に関する実験的検討 音像定位を決定する要因として,両耳に到達する音のレベル差と時間差とがある.同じ信号が時間差をもって両耳に到達する場合,先に到達した音がくる方向に音像を定位する現象を先行音効果という.ここでは,先行音効果を利用したステレオを「」時間差ステレオ」と呼び,その実現可能性を実験的に検討し,4.5〜18ms程度の遅延を与えればステレオ感が得られることがわかった.また,従来のレベル差ステレオとのステレオ感の比較を行うとともに,音色によるステレオ感の違いについても検討した.
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